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高齢社会において死亡保障の成熟化に伴い年金など生存保障分野の商品のウェイトが増してくれば、銀行、証券、信託などとの金融商品と競合する場面が増える(たとえば企業年金資金の委託者が運用効率に不満がある場合、受託機関の拡大を求める)のは必然なのである。
すなわち、生命保険業の固有の存在意義は、死亡、老齢、傷害・疾病・介護といった生活リスクの保障にあるが、これらのリスク保障機能は金融仲介機能と不即不離の関係にあり、生命保険会社は資金管理者として、安全かつ(市場の期待収益率との絡みで)有利な運用を行ない、次代を担う新規産業などへの資金供給という要請に適切に対処してこそ存在意義をアピールしうるのである。
Hの金融ビッグパン構想において保険業が銀行、証券など他金融業態とならんでその対象になっているのもこの故である。
ところで、このように生命保険業にとって重要な意義を有する資産運用を取り巻く環境はバブル経済崩壊後の今日大きく変貌している。
ここでは、21世紀の生命保険業がその金融サービス業としての存在意義をアピールし、社会の付託に応えていくために解決すべき課題を考察する前提として、1980年代後半のバブル形成過程とその崩壊後の企業の資金調達および生保金融を取り巻く状況を概観しておきたい。
わが国の企業部門による外部資金調達は、1970年代前半までの高度成長時代は、慢性的な資金不足のなかで銀行を中心とする金融機関からの借入による間接金融主体の構造であった。
その後、1973年の第一次オイルショックや変動相場制への移行などを経て、わが国経済が安定成長へと構造変化を遂げるなか、1975年度以降の国債の大量発行と債券流通市場の整備などにより金融の証券化が進んだ。
その後、為替管理の緩和・弾力化に伴い、わが国経済の国際化が進み内外資本移動が活発化し、金融の国際化も進展した。
このような金融資本市場の環境変化のなかで、法人企業部門による銀行などからの過度の借入が徐々に減少していった。
そして、1985年のプラザ合意を契機とする低金利政策がもたらした過剰流動性による株価の高騰(バブル)とともに、金融の自由化、国際化、証券化が加速された。
その結果、企業は内外の資本市場での設備投資を増加させ、また財テク活動を活発化させていった。
そのため、80年代後半には、企業の民間金融機関からの資金調達は大きく低下し、代わって内外の資本市場からの資金調達が急速に拡大した。
とりわけ、株式、転換社債、新株引受権付社債(ワラント債)による調達であるエクイティ・ファイナンスが急増した。
このような企業の資金調達構造の変化を背景に、生命保険会社は株式、外国証券それに実質的にはこれらと同じ性格の金銭信託(「特金信」と呼ばれる)を増加させ、貸付金や国内公社債などの円金利資産の占率を大きく下げていったが、この点は第四章で述べる。
バブル崩壊後の1990年代に入ると、企業の資金調達は、株式市場の低迷と急速な円高のなかで、圏内社債市場の規制緩和が進められたこともあり、国内社債(普通社債や私募債)にシフトしている。
だが、不良債権問題などから貸付に慎重な民間金融機関からの調達は減少傾向が続いている(その分、公的金融のウェイトが増している)。
生命保険会社も、バブル期にふくらんだ市場リスク(価格変動リスクや為替リスク)の大きい株式や外国証券を減少させ、貸付金や公社債などの円金利資産の積み増しに努めてきている。
今後の企業の資金調達を展望すると、間接金融から直接金融への流れは押し止めることはできないであろう。
また、金融ビッグパン構想が成功裏に実現すれば、東京金融・証券市場の空洞化(たとえばアジアの企業が東京市場に上場せずにニューヨーク市場などに上場すること)が解消の方向に向かうことも考えられるが、他方で経済・金融の生命保険業を取り巻く外部環境の変化と課題グローバル化は帰らざる河である。
国民の個人金融資産1200兆円の1割を預かる生命保険業界は、金融サービス業界の一員として、わが国の経済・産業の構造改革に役立ち、またグローバルな展開を図る企業の発展に資する形での効率的な金融仲介業務が求められている。
あわせて、機関投資家として、企業統治の観点からの機能発揮も強く要請されている。
1995年6月7日、昭和14年以来半世紀振りの全面改正となる保険業法(以下「新保険業法」)が公布され96年4月1日より施行され、保険制度改革が行われた。
この新保険業法は、昭和14年の「保険業法」の全部を改正するとともに、従来の「保険募集の取締に関する法律」および「外国保険事業者に関する法律」を廃止し、その内容を改正の上盛り込んだものである。
このような保険制度改革が行われた背景には、保険制度を取り巻く経済・社会の大きな環境変化がある。
先ず保険業が果たす生活保障の面では、急速な高齢化、国民の価値観やライフスタイルの変化のなかで、多様化する顧客のニーズに迅速かつ的確に対応し契約者の利便性を高めることが求められた。
次に金融仲介機能の面では、金融の自由化、国際化の流れのなかで保険制度改革に先立って、銀行、証券、信託などの子会社形態での相互参入を中心とする金融制度改革が進行していた。
さらに、グローバル化する金融・保険業における国際的調和への対応の意味もあった。
旧保険業法を中心とするこれまでの保険制度の枠組みでは、こうした新しい時代の要請に十分対応することが困難になっていたのである。
こうして、1989年4月以来の保険審議会における長期の検討結果を踏まえて、21世紀に向けての抜本的な保険制度改革がスタートした。
保険制度改革の最大の狙いは、規制緩和・自由化により競争原理を導入し、競争の促進と事業の効率化を図ることにある。
それによって、顧客のニーズにマッチした商品提供が可能になり、また資産運用やエコノミーズ・オブ・スコープを活かした業務範囲の拡大により運用効率が高まり、金融仲介コストの引き下げが期待されるのである。
具体的な規制緩和策としては次の点があげられる。
保険会社の業務規制の緩和として、先ず子会社方式による生損保相互参入が認められた。
また、従来行政による調整がなされてきたいわゆる第3野の保険(傷害、疾病、介護保険)については本体での完全な相互参入が認められた(ただし、中小会社や外資系会社の経営に対する激変を緩和するため経過措置が設けられている)。
その結果、96年8月27日、生保の損害保険子会社6社と損保の生命保険子会社11社に対して免許が付与され、これらの子会社は同年10月1日から事業を開始した。
しかし、折から日米保険協議が行われていたため、前記激変緩和のための免許の条件(附則112条)はペンディングになるという変則的な形になっていた。
その後、同年12月14日に合意をみた日米保険協議の内容を受けて、大蔵省はペンディングになっていた免許の条件を12月27日付けで通知した。
それによって、外資系会社の得意分野を保護するため、生保の損害保険子会社による傷害保険については所得補償保険を除く傷害保険に歯止めがかけられた。
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